【しろぽんの十大小説 2位】ディケンズ デビット・コパーフィールド 史上最もハッピーなハッピーエンド

‘魅力的な登場人物と最高のラスト





今と昔とで感じ方がものすごく変わってしまった小説である。


昔は我慢強かったのか、長大な物語の結末(ハッピーエンド)に到達したくて読むことができた。
今は、それでは息切れしてしまう。

ディケンズの作品のストーリーは特別複雑なところはなく、最初の設定の部分でほぼお約束が見え、結末もおのずと推測できるようになる。
ストーリーだけではこの長い物語を読むだけの楽しみには不十分である。

デビット・コパーフィールドはディケンズの作品の中ではもっとも人物配置も複雑で深みがあるが、ある程度読み進めば、それぞれの役割は分かってくる。
若く未経験な主人公、主人公が想いを寄せるヒロイン、主人公に意地悪なヒール役など主な人物の配置は明快で迷うことはない。
役割を見切る作業は楽しく、ストーリーを追いかける読み方の重要な牽引力になるが、ディケンズの作品を沢山読み、何度も読んでしまうと、それらは答えの分かっているなぞなぞのようになってしまう。
そこまでディケンズを呼んだ方は、是非、脇の端役たちの人情を楽しんで欲しい。


まず、スティアフォース、彼は端役とは言えないが、他の単純で若い人物たちに、世界の複雑さ、深遠さを教え、読者には作者の真のメッセージを垣間見せる。
デビット・コパーフィールドが馬鹿すぎて感情移入できない段階でも、スティアフォースが私の気持ちを代弁してくれるので痛快である。私の一番のお気に入りである。


それから、ミコーバー氏。落語での長屋の一員のように、人情の機微と困難な時の明るさを体現し、作品背景の時代風景・町の実感を教えてくれる。
タイムマシーンでディケンズの時代に行くとすると、ミコーバ氏の言動からこの時代を学びたい。


このように、主人公の周りの人物と親交を深めていき、最後に、主人公と恋人が幸せに結ばれる様を読むとその感動はいつまでも心にのこる。
特に、この作品の最後のシーンは格別の感動と味わいを残してくれる。ハッピーエンドをただ予感させるだけでなく、幸せになった主人公たちを最後まで描ききっているのだ。
読み終わって、これほど満足できた作品は他にない。
トルストイもそうだが、これだけの大作にならやっぱりラストも余韻たっぷり、後日譚たっぷりのエピローグが必要だ。ここまで読んできた読者にとって作品世界と別れるにはそれなりの覚悟が必要だからだ。
もちろん、読後同じ作者の作品を探して読むというのもいいが、これくらいの作品になると、同じ作者のものでも独立の世界観を持っているものだから、他の作品では満足できない。
また、ここだけの話、ディケンズの作品ではこの作品に匹敵する作品世界をもつものは他にない。だから、いつまでも思い返せるラストシーンはとても大事なのだ。

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