アニメ、コミック Hunter×Hunter(ハンターハンター)は良い作品である

‘このアニメは凄いです。

どこが凄いか?

テーマの深遠性と一貫性、

キャラクター造形のユニークさと一貫性、

シナリオ(セリフ)の表現力と一貫性、

場面描写の丁寧さと一貫性、

これらが、現実世界に全く依存しない架空の世界のリアリティを高め、大人にもしっかり味わえる、しかも、沢山の映画や劇画を見て最高度の作品がもつ感動を知っている大人、にも十分に訴えかける力を持っている。

作品の概要はそこらに良くある「格闘戦成長」物語である。

分類的にはドラゴンボールやOne Peaceなどと同列で見た目にはっきりと区別できるような目印は無いだろう。

架空の世界で、幼い頃に別れた父親を求め、父と同じ職業、ハンターになった主人公ゴンと親友キルアの物語、
だ。

原作者が「幽遊白書」の冨樫義博で、基本世界造形のユニークさと緻密さは彼の能力が発揮されている。
しかし、この作品が、彼だけの力で、これだけ優れたものになったとは考えられない。作品が優れているのは、単にテーマの設定や基本的なコマワリなどだけで優れているのではなく、肝になる部分での繊細な表現力と全体構成をしっかり維持しているバランス感覚なのだ。

それらの部分を詳しく説明しよう、
まず繊細な表現力は、一見しても分からない、
何故なら、このコミックやアニメも、コストを抑えるためにシーンを描く数を減らし、描き起こすにしても単純な絵になるように配慮しているからだ。
スタジオジブリが作る映画のような表現はお金の都合上不可能、
だから、的を絞って描く。
これは元々漫画が持っていた根源的要素である。コミック・漫画は映画での絵コンテと似て、表現したいものをギリギリまで省略して、対象の根本要素のみを描き出す。読者はその省略されたものを頭で補いながら、本当に大事なものを読み解くのだ。

勿論、読者の読み方には様々で、ある場面で主人公以外のキャラクターを省略して描くとき、作者はこれでイイと思っても読者はその脇の人物こそが主人公の性格を表すと解釈するときもあるだろう。こうなると作者の読み違いである。主人公の心理変化を描く場面でも、主人公こそを省略し、脇の人物をしっかり、繊細に描かねばならない時があるのだ。
それをHunter×Hunterの作者たちは見切っている。読み違わないのだ。
それ故に、読者は描かれた場面ごとその想いを遂げ、満足できるのだ。
的を絞って緻密に計算された表現が読者の人物への感情移入を後押しし、彼らの悲しみや喜びに共感し、すんなりと作品世界へのめり込める。

超人的な戦闘力を持つ術者たちの戦いなので、登場人物は良く死にそうになる。死ぬが、子供も読む漫画なので必要でない限り残虐にしたくない、予定されていた死であっても喪失感、悲しみは残したい、そんな時、この作品は人物の目を繊細に描く、単に白黒で影だけだった表情のシーンから、一転してアイシャドーの広告グラビアのように緻密でリアリティのある目を描く、読者はそれに驚き注目する、そして目を描く色の1色の明度が下がる、大きさや形は変わらない、しかし十分だ。読者の心に哀愁が響くのだ。


登場人物の性格や世界観がストーリーの流れによって変化していくことは良くある。これは日本の映画やアニメに多く見られ、最も幼稚な失敗である。

日本の映画界はハリウッドの作品だけを見て、その多額の製作費のみなしえることをやろうとする。そして、予算を理由に愚痴をたれて諦める。
そもそも見ている先が間違っているし、思いをやり遂げようとする意志も弱い。そんな人に良い作品はできない。
かつて、宮崎駿がTVアニメでやっていたことを認めなかったのも、スターウォーズみたいな作品でないと儲からない、儲からないからしんどい事は嫌だという日本映画界の癖はいまだに直っていない。
だから、誰かが作って儲かるまで認めない、一度儲かると分かると同じ様なシステムで作品を作り続ける。意思の弱い監督・製作者はお金を引き出しやすいので、それに従い駄作を作り続ける。

少し横道に逸れたが、
Hunter×Hunterには人物・世界観の変化がない。造形に新たに追加される事項はあっても、変化はない。頑ななまで守る。この頑固さが登場人物や作品世界にリアリティを付与している。
この頑固さは儲けにならない、特に、この手の「格闘戦成長」物語はドラゴンボールやOne Peaceの成功例が身近にあるので、スポンサーは絶対に納得しない。
「そんな設定どうでもいいだろう、死んだって生き返らせればいいし、強くなりすぎたら宇宙人でも連れて来ればいい、子供や孫まで仲間にしろ」というのが守銭奴の要望なのだ。

Hunter×Hunterのアニメ制作を行っているMAD Houseにはスポンサーになびかない、
番組放送枠を深夜に変えられ、安物のCMに作品を分断されても、この作品を愛おしく思っているから、儲けにならない努力を苦にしていない。
これはまさしく、この作品のテーマの1つであり、作り手の戦いそのものがこの作品に反映されているのだ。
アニメ版監督 神志那弘志のことはこのアニメで初めて知ったが、彼がどれだけ作品を愛し、どれだけ信念を強く持っているかはよく分かる。
知ってから調べると、「子供に媚びる展開には絶対にしない」との発言があった。なるほど!である。
そもそも、子供と一緒に映画やアニメを観ているとすぐに気付くが、子供向けや大人向けと分けて作品を作ることなど不可能だ。
良い作品か悪い作品かである。


そして、自信を持って、Hunter×Hunterは良い作品であると言える。









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