インド
‘ コンピュータ業界でも、外国に作業を発注してコストを下げるという話が普通になってきています。特に、この業界では中国以上に、インドが注目されています。
10年前くらいに、私の上司だった人がインドにプログラミングを外注するための視察をしたのですが、その時にはまだ十分な環境が出来ていなかったそうです。しかし、今では、ソフトウェア会社がインドに支店を持つのも普通になってきています。
インドは昔から数学に強く、英語も解するので、コンピュータの世界では中国以上に能力を持っているといえます。
しかし、前述の私の上司の話にもありましたが、資本主義的な「働く」という概念が日本とは異なる点がとっても困るそうです。
インドには、あの有名なカースト制度が厳しく残っていて、コンピュータのプログラミングが出来るような、大学や外国の学校で教育を受けた人は、ほとんどが上位のカースト出身者でした。彼らは、元々、地主であったり、工場の所有者、官僚などの子弟で、生活のために「働く」必要が無いのです。だから、ものすごく能力があるのに被雇用者として働くという意識が少ないそうです。
もちろん、これらの事情も、外国との交流が進み、都市生活者が増えてきている現在では変わってきているようです。
1997年にインド大統領に就任したコチェリル・ラーマン・ナラヤナンは最下層のカースト出身で、就任時は私自身大変驚きました。しかし、地方や農村部では、まだまだカーストの考え方が根強く残り、社会的にも下位のカーストの民衆が差別されている現状には変わりないようです。
カーストの最下層は「不可触民」と呼ばれ、触れることすら忌み嫌われ、日本では考えられないような差別を受けています。有名な山際 素男さんの「不可触民―もうひとつのインド」によると、「不可触民」カーストの人々は、轢き逃げされても、女性がレイプされても泣き寝入りで、訴えると、逆に逮捕されて警官より暴行を受けるそうです。無茶苦茶です。
「女盗賊プーラン」などには、さらに女性であるだけで考えられないような差別を受けている現実を教えてくれます(こんな社会じゃ、そりゃ盗賊になるよ!)。そしてその「不可触民」は人口の10%、1億人近くいるそうです。
人口が10億に達する国家で、公然と差別的社会システムが息づき、それを解決できない現状に、人類の英知の限界を感じます。
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