ファーブル「植物記」、昆虫記だけでなくこっちも傑作

‘存在は知っていたけど、ここまでの良書だとは知らなかった。

そう、まさに「良書」
人に勧められる本。漢字さえ読めれば子供にも分かりやすい。

作者はあの昆虫記で有名なジャン・アンリ・ファーブル
訳は日高敏隆と林瑞枝
そう、あの動物、昆虫で有名な日高さん。

林さんはフランス語に強いので、言葉の翻訳は林さんが担当しつつ、日高さんの思い入れを込めた訳になっている。

この本はまさに植物学を子供に分かりやすく教えてくれる。

ギリシャ神話や伝説、母と子供の会話を語りつつ、植物の生物学的な構造をきちんと解説し、同時に生き物の神秘を教えてくれる。

箇条書きに解説された中学生の理科の教科書では絶対に理解できない植物の仕組みに関しても、慣れ親しんだ昔話を読むがごとく頭にすっと入ってくる。

例えば、木の年輪のことについて、
何千年もの樹齢をもつ大木の奇跡を話しつつ、木の中を循環する樹液が葉で作られ、樹皮を通りつつ次第に液中で細胞が構成されていく、その細胞が集まって細い管となり、それが集まって新しい樹皮となり、古い組織が内側に残り、一層一層重なりつつ大きくなる。
木が年輪を重ね大きくなることは誰でも知っていると思うが、このように、樹液の中から細胞が生まれ、集まり、何かの役割を持つ器官となり、やがて大木に育つことをこんなにも明確に理解しているだろうか。

少なくとも生物の教科書にはこのようなことは書いていない。

ファーブルはダーウィンの進化論に反対していてが、この植物記を読むと、彼が理屈の上で、適者生存と進化を理解していたことが分かる。
ただし、ダーウィンの言うような「無慈悲な絶滅」に感情的に同意できなかったのだ。
ファーブルは生物を愛していた。その生物が自然の無作為の選択によって意味もなく滅ぶという言い方に反対していたのだと思う。

個々の生物には、それぞれ存在する意義があり、それが存在することで全体に貢献していることを「知っていた」のだと思う。

遺伝子の存在は知らなかったであろうが、自然界に歴然として存在する真理を理解し愛していたのがファーブルなのだ。

オリジナルは古書のみ


新装版



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