中国海軍 射撃(火器)管制レーダーの照射
‘少し前に、ニュースで中国海軍は兵器管制用レーダーを海自の艦艇やへりに照射したと報じていた。
これをどのように扱うか、一般の人には分からないであろう。
新聞などでは、この照射を「後は引き金を引くだけ」という段階と書いているが、
実際に、各種現用兵器がどのような手順で操作。攻撃されるか、また、それがどのような脅威なのか分からなければ、引き金を引くだけと言われても理解できないと思う。
艦艇には、対艦・対潜・対空の各種兵器を搭載している。
このうち、他の海上艦艇への攻撃に使用するのは対艦・対空兵器である。
専門家でも知らないことも多いが、対空兵器、メインは対空ミサイルだが、これは対空とあるが、海上の艦艇に対しても有効である。
通常、艦船は常に対水上・対空警戒レーダーを作動させており(対潜パッシブソナーも作動させているが複雑になるので省略)、
接近する航空機や艦船、ミサイルなどを監視している。
これらのレーダーは、遠距離広域を監視するために、わりとゆっくり回転している。
近頃のイージス艦のレーダーでは、電波を電子的に回転させている為に目に見えないが、
映画に出てくるような、また空港のレーダーのようにくるくる回っているレーダーを想像してもらえば間違いない。
このレーダーでは、敵の位置は数秒に数回というように、断続的にとらえることになる。
車のナビで地点情報を数秒ごとに更新しているような感じだ。
この捉え方では、高速のミサイルを誘導することは出来ない。
もし、戦闘を前提に敵と思わしきレーダー像を捉えた場合、
まず最初に、相手が敵か味方かを識別する。
海には民間船や同盟国の艦艇も沢山存在するので、その相手が誰なのか識別することは必須である。
そして、相手が敵性国の艦艇で、深刻な脅威となれば、
攻撃許可を受け、攻撃を開始する。
この攻撃開始時に、火器管制レーダー(射撃管制レーダー)を作動させ、
リアルタイムで相手艦船・航空機を追跡し、射撃管制システムに十分な情報を入力出来れば兵器の発射が可能になる。
この後、ミサイルなり、火砲なりが発射されるのだ。
射撃管制レーダーの照射を、レーダーによるロックオンと言えばゲームなどをしたことをある人には分かりやすいのではないだろうか。
そして、現代の先頭では、十分に管制されたミサイルなどは百発百中で、一発命中すればほぼ撃沈されるので、
先に打てばほぼ勝利できる。
昔は、艦船も巨大な大砲を持っていて、それらは目に見える程度にゆっくり動いていたが、今の大砲は一瞬で目標に指向するし、ミサイルに至っては、VLS(垂直発射システム)といって、普段格納している艦船に埋め込まれた箱の中から、直ちに発射される。
銃で引き金を起こすような動作は目に見えるような形では現れないのだ。
だから、緊張状態にある海域では、本当に相手を攻撃する場合で無い限り、射撃管制レーダーを照射することは滅多にない。
また、軍事演習では、実際のミサイルを発射する代わりに、射撃レーダーの照射を攻撃完了とみなし、勝敗を決めることもある。
演習を出来るだけ本当の戦闘に近い状況で行うことが射撃管制レーダーでのロックオンなのだ。
過去の例では、
冷戦当時、偵察機が領空内に侵入すると射撃管制レーダーを照射していた。
相手のレーダーを調べるためにわざと領空侵犯して調べることもあった。
冷戦以後では、米国機などに元気な当時のセルビアやイラクが照射し、米軍がそれに対してHARMなどの対レーダーミサイルを発射して報復していた。
緊張状態では、これは攻撃的行為と判断するのが今の趨勢になっているのだ。
今回中国軍が照射したのは、ある意味、戦闘は行わないと確信できているからとも言えるが、
国同士の暗黙のルールを無視しており、偶発的な戦闘に結びつく危険な行為と言えるだろう。
さらに、踏み込んで考えると、
政治家は外交において、国同士の暗黙のルールの上で、段階的に警告するものなので、今回の行為は政治家の意思表示を混乱させることになる。
相手の大使を呼んで抗議する、空母を近海に派遣する、自国の大使を帰国させる等など、それぞれ、相手国にどれくらい本気に嫌なのかを示すメッセージになっている。
通常、大使の召還は、相手国ともう交渉しない意思表示と言われるが、実際は電話1本で相手国と話が出来るのだから、それらの行為は相当に形式上のものなのだ。
そう言う意味では、ほぼ戦闘間近で、その場所では攻撃も辞さずと見なされる射撃管制レーダーでの追跡を指導者が許可したとは思えない。
途中の段階が抜けており、日本との交渉に役立たない脅しになってしまうから。
中国軍が指導者の意思とは別に行っていたと思われる
この時の詳しい戦術的な分析は「世界の艦船」誌がやってくれると思います。
世界の艦船 2013年 4月号
PANZER (パンツァー) 2013年 3月号
MODEL Art (モデル アート) 2013年 4月号
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