マイナンバーと銀行口座の紐づけでの資産監視には反対

マイナンバーと銀行口座紐づけの義務化法案

新型コロナ肺炎の流行のどさくさに紛れて、また出てきているのがマイナンバーと銀行口座紐づけの義務化法案。

これをすることで、政府行政は国民の現金資産を管理できるようになる。現金での収入や現金資産の増減を監視できるので、主に徴税に役に立つのだ。

今は、特別給付金の迅速給付などを名目にしているが、国がやりたい最大の目的は、現金収入を把握して徴税を強化することである。

しかし、これには、大きな落とし穴がある

 

資産監視対象から外れる超富裕層

さっきから、書いているように、このことで監視できる資産は現金(銀行に預けている預金も現金)のみであり、

不動産や証券資産などは管理できない

(義務ではないが、証券会社にマイナンバーを登録することもある)

となると、給与収入者や現金収入が主な自営業者などがメインの監視ターゲットになるということではないだろうか?

既に大きな資産を持っている人は、たいして利息も付かない銀行に資産の大部分を預けたりしていないので、いわゆる富裕層の資産監視の強化には役立たないのだ。

もちろん、利益を内部に留保し続ける企業への課税強化にも役立たない。

既に源泉徴収という、自主申告の原則に反する税の先取りまでしてほとんどの給与所得から完全な徴税をしておきながら、一体これ以上、何を取ろうとしているのだろうか。

また、今日の政権、特に安倍政権では政策決定過程を完全に隠蔽している。

後で指摘されそうなことは記録にも残さないという、およそまっとうな政治家や指導者なら考えられないようなことをしている政府に対して、

「国民の側だけは全部丸見えにする」

ような法案は到底是認できない。絶対反対である。

 

税収を増やして財政支出を節約するはずのマイナンバー制度

そもそも、マイナンバーカードは徴税機能と行政サービス給付をリンクさせるために導入されたもので、

銀行口座とのリンクは、最初から反対に合うことが分かっていたから、目的に加えていなかった。マネーロンダリングなどの監視には役に立つであろうが、国民の大多数にとって、利益はない。

徴税とリンクさせることで、働く外国人も医療保険を受ける代わりに税金を払ってもらい、無駄な福祉サービスを洗い出し、医療福祉サービスを効率化させ、最終的に支出を削減させることが目的だったはず。なのに、今の政府の財政規律で支出が削減できる訳がない。

現在、福祉介護サービスは危機的な状況にある

現場で働く人は過酷で低賃金の、あらゆるハラスメントの横行する環境によって使い捨てにされていく。病院では、一番大変な排便解除や入浴介助を行うヘルパーさんが、医師、看護師、など病院で働く人のなかで最も低賃金である。これは、医療は医療保険、介護は介護保険という別の制度のなかで実施されているからだ。でも、実際には、医療と介護などは全部つながっていて、そこに天地のような差をつけるのは何なんだろう。

医療現場には高度に教育されたエリートがいるが、介護の現場で働くのには教育は必要とされていない。やる気のあるひとも、ない人も同じように採用されて酷使される。

特養のシステムも完全に瓦解している。本当に必要な人は特養に入れない。ほとんどの人は、必要最低限の介護と病院での入院を繰り返しながら死んでいく。それも、入院費用が払える人だけである。入院出来ない人は家で半介護を受けながら病院へ通う、掃除や入浴が出来ないので家は無茶苦茶汚い、ヘルパーさんはこのような現場に週2回程度、2時間程度で派遣される。掃除のヘルパーさんはゴミ溜めのような家を掃除して、身体介助の資格のあるヘルパーさんは家庭のお風呂で入浴させる。どんなに親切にする人も、しばいて虐待しつつする人も誰も給与は同じだ。何しろ介護の現場は家族ですら見に来ない。完全に隠蔽されているので、弱い立場のヘルパーさんは雇い主と同僚と介護相手にハラスメントを受け続ける。こんな現場で働き続ける人がいかに貴重な人材か分かるだろうか?だけど、時給は1000円に満たない。

そもそも、介護の現場に医療保険の点数のような評価を行うのは難しい。人と人の関係性に依存するので、精神医療の分野や教育のシステムに近いと言える。なんでもNPO法人任せにするのではなく、行政が前面に出て、これまでの医療資源を介護福祉サービスに投入すべきだろう。介護こそ一律で良いのだから、公的な提供が良いのだ。大阪府立介護センターや明石市民介護所があっても良いではないか。ヘルパーさんは公務員として雇うべきだ。また、せっかくマイナンバーを導入したのだから、外国人にも福祉と徴税と権利が一体となった労働環境を提供すべきだ。移民をいじめているような余裕は日本にはない。すでに日本は移民の労働力が無ければ社会が成り立たないのだから。

ちなみに、みんなも知っているように、現在介護サービスの大手企業と言われる会社はすべてブラック企業である。そもそも、本業でないから本社上層部には介護サービスに関する専門家がいない。単なる介護専門の行政と癒着した人材派遣企業だ、ニチイ学館、ツクイみなそうである。理想を持った起業家が起業できない環境にあるのが今の介護サービス業界なのだ。

日本の多くの人的資源や行政予算の半分がこの破綻した介護福祉サービスによって、誰も幸福になれないまま浪費されている。救いたくても救えないので、高齢者や障がい者が実質的に社会から無視される存在になっている。誰もがいつかその立場になるのに。

 

強者に阿り、弱者を無視する国、日本

いつから日本はこんなに弱者に過酷な国なってしまったのだろうか。ほとんどの国民が高齢者になろうとする現在、よくもまあ、現実から目をそらせていられるものだ。本当に日本の国民はバカなんだと思う。歳を取れば高齢者になるし、ガンにかかれば障がい者になるのだから、国民すべての未来の自分の姿なのに、一切関心を向けない。現在の政権がどの方向に向かっているか分からないのだろうか?

マイナンバーを銀行にリンクする暇があるなら、企業の内部に保留される利益への課税を強化し、高所得層の累進税率を目いっぱい上げて、超富裕層に対する資産課税を行うべきだ。

日本は固定資産税と相続税以外、資産にたいする課税をほとんど行っていない。格差是正には資産課税が最も効果的で、お金を経済社会に還流させる効果がある。

多国籍企業には税務署得意の「みなし課税」を行い、たとえ他国で申告している所得であっても課税すべきだ。

これまでの利益に対する課税では、日本で稼いだ企業の利益が日本に戻ってこない。利益以外は課税対象にしなかったのは、企業の行う投資が社会に還元されるという前提があったからだ、これからは、売り上げに対しても課税が必要だ。すでに一般国民は消費税という形で売り上げ時に税金を払っているのだから、企業も売り上げに対して累進で課税すべきだ。

この方が確実に税収を増やす効果がある、でもやらない訳。

それなのに、企業の競争力を弱めるという理屈で実施しないのは単なる言い訳にすぎない。すでに日本はIT先進国ではないからだ。日本はITサービスを提供される側なのだ。現実から目をそらせるのはやめよう。繰り返すが、日本はIT先進国ではない。情報技術に関してはアメリカの先端企業の足元にも及んでいない。だから日本でサービスを提供するプラットフォーマーには多額の税金をかけても良い。その影響で楽天がつぶれても、たかが1企業だ。

 

安心して歳をとれる社会になれば、希望は生まれる

そして、破綻した介護福祉・医療保険制度を本気で立て直すべきだ。本当に老後や病気の時に安心できる社会になれば、人々は希望を持てる。使いつくされた言葉だが、これは真実だ。ルーレットのような希望は長続きしない。あなたが病気になっても日本は見捨てませんよという明確なメッセージがあれば、国民は希望をもって生きていけるはずだ。

環境破壊や災害、疫病によって社会は良くならないかもしれないが、希望はいつでも人々の救いになる。高齢者や病気の人、外国の人に優しい社会になれば、それは子供たちに影響を与える。社会を無視するのではなく、社会に関心を向けて学び働く人になれば、その中から、必ず社会を良い方向へ変革できる子供たちも出てくる。それが唯一の日本の未来である。

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